インクリメンタリティ(増分)とは何を測ろうとしているのか
広告の成果を評価するとき、多くの場合、アトリビューションという考え方を使って「どの接点がどれだけ貢献したか」を整理する。
ただし、アトリビューションをどれだけ丁寧に設計しても、ひとつだけ答えられない問いが残る。
その広告がなかったら、売れていたのか。
インクリメンタリティ(増分)とは、この問いに向き合おうとする考え方。
インクリメンタリティ(増分)とは
インクリメンタリティ(増分)とは、広告によって成果が「どれだけ上積みされたか」を捉えようとする視点。
成果を「どの接点に帰属させるか」ではなく、「広告が存在したことで、結果は変わったのか」という問いに置き換える。
つまり、
- 成果を配分するための考え方がアトリビューション
- 成果が増えたかどうかを見る視点がインクリメンタリティ
同じ成果を見ていても、問いの立て方が根本的に異なる。
また、オンラインだけでなく、オフラインの売上リフト(Sales Lift)も計測可能になっており、これもインクリメンタリティの一種。
なぜアトリビューションだけでは足りないのか
アトリビューションは、すでに起きた成果を前提に、「誰の貢献として扱うか」を整理する仕組み。
一方で、その成果が本当に広告によって生まれたのかまでは答えない。
たとえば、
- もともと買う予定だった人
- 指名検索で流入していた人
- 他媒体の影響で意思決定していた人
これらの成果も、アトリビューション上は「広告成果」として計上される。
インクリメンタリティは、こうした前提そのものを問い直す。
SAN環境では、なぜ増分が見えにくいのか
現在の広告計測は、SAN(セルフアトリビューションネットワーク)構造の上に成り立っている。
SAN環境では、
- 各媒体が
- 独自のルールで
- 自らの成果を評価する
- 「LTA(ラストタッチアトリビューション)」という計測モデルでは、直前の接触のみを評価する
そのため、
- 媒体ごとの数字は成立する
- しかし、媒体を横断した「増分」は見えにくい
- LTAが「慎重な意思決定者」が生み出す増分を無視してしまう
という状態が生まれる。
インクリメンタリティが重要視される背景には、SAN構造では答えきれない問いが残るという現実がある。
解決策
インクリメンタリティを測る、MMM(メディアミックスモデリング)を活用する。
MMMは、Cookie規制の影響を受けず、チャネルの「真の増分効果」を可視化できる手法。
インクリメンタリティは「万能な正解」ではない
インクリメンタリティは、理論としてはシンプルに見える。
- 広告を出した場合
- 出さなかった場合
この差分を見ればよい。
しかし、実務では簡単ではない。
- 完全な対照群を作るのは難しい
- 配信停止テストにはリスクがある
- 外部要因を完全に排除できない
そのため、インクリメンタリティは常に近似値として扱われる。正確な答えを出すというより、「どこまで検証できているか」を考える領域に近い。
ただし、最新の「次世代MMM(AIM)」は、リアルタイム性が高く、従来よりも迅速に判断に使えるよう進化している。
それでも、この視点が必要な理由
インクリメンタリティは、アトリビューションを否定するための考え方ではない。
むしろ、
- アトリビューションで配分を整理し
- インクリメンタリティで問いの高さを調整する
この関係で捉えると、広告評価の見え方が変わる。
「どの広告が一番効いたか」ではなく、「この広告は、やる意味があったのか」。
この問いを持てるかどうかで、数字の扱い方は大きく変わる。
「アトリビューションかインクリメンタリティか」ではなく、日々の運用にはLTA(ボトムアップ)、予算配分にはMMM(トップダウン)という併用が推奨されている。
メモ
- インクリメンタリティは「増分」を見る視点
- 成果配分ではなく、成果の有無を問う
- SAN環境では特に重要になる
- ただし、万能な答えを出す手法ではない
広告評価は、数字を当てにいく作業ではなく、問いを整理し続ける作業。
インクリメンタリティは、その問いを一段上に引き上げるための考え方。
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